「塗らずに品質を評価する」
トヨタ独自の世界初技術
クルマの第一印象である「色」は重要な商品力です。ファッション業界において毎年流行色が変わっていくのと同じように、自動車業界でも旬の色は変わっていきます。
しかし、販売までの道のりは容易ではありません。塗料の配合・塗装時の工法や環境など因子が複雑に絡み合うことから、実際に塗装を行って品質の評価・確認を行う必要があり、やり直しも発生するなど新色の開発には時間がかかっていました。
そこでトヨタシステムズではトヨタ自動車の塗装分野に入り込み、現場で働く方と共にソリューションを検討。色の製作から測定までの工程をデジタル化し、「塗らずに品質を評価する」ことで短期間かつ質・量の向上を可能にしました。
表面平滑性と色変動性
新たな色を作る際、まずはじめに色の目標を決めます。そのあと塗料のレシピを作成していくのですが、配合や希釈の仕方、塗装する際のロボット条件やブースの温湿度・塗膜の構成など、さまざまな因子が複雑に絡みあいます。そのため、同じレシピでも車体の種類や作られている場所が変われば、実際に塗った後の色合いが違って見えるのです。
その色合いの違いに大きく影響を与える2つの要素について、技術開発を始めました。
1つ目は、高級感などの質感に繋がる、表面の微細な凹凸「表面平滑性」。
2つ目は、工場で量産する中で発生する「色変動性」です。
塗装プロセスの複雑さと
熟練者のノウハウをデータ化
技術開発時のアプローチとして、ポイントは2つあります。1つ目は「塗装プロセスの複雑な因子を説明するデータの作成」、2つ目は「熟練者が現場で培ったノウハウの組み込み方」です。
データの作成においては、色の開発プロセスに注目しました。各工程ごとの因子に対し、トヨタシステムズの20年に渡る色・塗装分野のIT支援を活かし、デザイン・材料・品質評価・量産の情報をつなぎ合わせたデータセットを作成。さまざまな因子の掛け合わせに対応できるよう、分析の基本データとしました。
塗装シミュレーション
システムで
緻密に色や塗装品質を再現
試行錯誤の末にできたのが、塗装シミュレーションシステムです。AIが組み込んだデータをもとに、塗料レシピと車体モデルから実際に塗った際のイメージを再現します。
評価方法をデジタルに置き換えることで、いままでの工数に比べて期間を短縮できました。色の難易度に合わせて、デジタルでの評価の判断が始まっています。
この世界初の技術は、国内・海外(アメリカ・中国)での特許を出願済みで、塗装国際学会でも発表をしています。
お客様に笑顔を届ける
塗装プロセスにおける品質評価のデジタル化により、旬な色を早く、品質良く提供することで、車を購入されるお客様を笑顔にすることにつながります。
今後もAIやVRなどのデジタル技術を用いて、生産の効率化とお客様の満足度向上を図れるよう、日々技術を向上していきます。