
- 社名
- トヨタ自動車株式会社
- 所在地
- 愛知県豊田市トヨタ町1番地
- URL
- https://global.toyota/jp/
- 業種
- 自動車の生産・販売
- 従業員規模
- 70,000人以上
お客様の課題
電気図面・機械図面・仕様書等の設備保全業務に必要な情報は膨大で、多くは紙で管理されている。必要な情報を探し出すためには時間が掛かり、保全作業員にとっては〝付加価値がない作業〟を強いられていた。設備が突発故障した際は少しでも早い復旧が求められるため、よりスムーズな保全業務を実現するデジタル化を検討。
実施の効果
図面情報等だけではなく、設備の状態や保全履歴等の他システムにある情報をタブレット上から検索・閲覧できる「工場エクスプローラ」を開発。各種ドキュメント類は工場構内の地図と連携しており、対象ラインを選択することにより情報を絞り込めるようになった。タブレット上で各種システムが利用できるため、交換部品の手配や関係者との調整を詰所に戻らずにその場で実施。修理時間短縮や作業者の負担軽減にも繋がった。また、点群データの活用により高所作業等のリスクを事前に把握できるようになり、作業前の安全対策も強化された。
インタビュームービー
開発の経緯

衣浦工場
駆動H・EV製造技術部 工場支援室
エキスパート 溝上 裕也様
検索スピードと使いやすさを両立させ、保全作業員の負担軽減につながるシステムを開発しました。
設備が故障すると生産はストップし、後工程に遅れが生じ、最終的にはクルマを購入するお客様をお待たせすることに繋がります。少しでも早く修理を完了させるため、デジタル化は解決策の一つでした。
デジタル化にあたって一番大きな課題は「検索スピード」でした。単に資料を電子化するだけでは根本的な解決にはなりません。書庫に資料を取りに行く「移動のムダ」を取り除くだけではなく、膨大な紙の資料から必要な情報をすばやく探し出すことも必要でした。「検索スピード」に加えてデジタルツールに不慣れな作業者でも「直感的に使いやすい」システムであることを求め、開発がスタートしました。
私自身も経験しましたが、設備保全に配属された新人が最初に任される仕事は「先輩に指示された資料を書庫から持ってくる」ことでした。その間、先輩は別の調査や修理を進めてしまいます。本来なら間近で学べるはずの作業工程を見逃してしまうことは、大きな学習機会の損失だと感じていました。
導入効果

作業効率が飛躍的に向上。平均修理時間を、10〜15分短縮することができました。
大きな課題であった検索スピードについては、SNSのハッシュタグ検索をヒントに、図面や仕様書にハッシュタグを付けることで素早く目的の情報にアクセスする方法を考えました。しかし、いざ実装してみると検索範囲が広すぎてピックアップをするのに予想以上に時間がかかってしまいました。検索時間の短縮についてトヨタシステムズの開発者に相談したところ、実際に工場に来て利用シーンを確認してくれました。1分1秒でも速く設備を復旧しようとする保全現場を見てもらい、現場の利便性に合わせて検索ロジックを改良してくれたことは、大変心強かったです。
情報の検索時間が大幅に削減されただけでなく、タブレットのカメラ機能を活用することにより作業の記録や動画を残す文化が根付き、保全作業のノウハウが蓄積・共有されるようになってきました。新人作業者にとっては、先輩の作業を見ながら学ぶ機会が増えたのではないかと思っています。
「工場エクスプローラ」導入後、平均修理時間が10〜15分短縮されたという成果も得られました。号口稼働に向けてサーバーを移行する事があったのですが、試行環境のページに引越しの案内や新サーバーのURLを明示していただいたことでスムーズに移行が完了し、現場での混乱もありませんでした。
今後の展開・展望

設備保全業務の効率化と安全対策の強化が実現。今後、さらなる進化や展開にも期待しています。
ドキュメントとマップとの連携に加え、点群ビューア機能も備えた「工場エクスプローラ」の導入により、設備保全に必要な各種情報を一元管理できるようになりました。タブレットから設備状態の確認や交換部品の手配、保全記録の入力も可能になり、業務の効率化が進みました。
設備保全の現場では高所や狭いスペースでの作業が求められることが多いため、事前の安全対策が欠かせません。点群データの活用により、作業前に周辺の状況を把握できるようになったことで、より安全でスムーズな保全作業が実現しました。
導入にあたってトヨタシステムズには私たちの要望だけでなく、現場の声を反映しながら改善を重ねていただきました。その結果、デジタルツールに慣れていなかったベテラン層からも、「使いやすい」「業務が楽になった」といった好評の声が多く寄せられています。
今後、こうしたデジタル技術はさらに進化し続けると考えています。トヨタシステムズには、点群データの精度向上や機能拡張を進めながら、より快適なシステム環境を提供し続けてくれることを期待しています。
担当メッセージ
工場エクスプローラの開発は、現場の〝困り事解決〟が出発点でした。保全作業者の方々にヒアリングを重ね、業務フローや必要とされる機能を確認しました。実際に利用される現場に足を運び、ユーザの声を直接聞く「現地現物」がシステム開発にも重要であると改めて実感しました。
従来はオリジナルの紙図面をコピー機で拡大して現場に持ち込んでいたので、細かい配線や数値が滲んでしまい判別しにくいという課題があったそうです。タブレットで電子図面を確認できるようになり、必要な部分を拡大しても鮮明に確認できるようになりました。ユーザから「とても楽になったよ」とのお褒めの言葉を直接頂くこともありました。
重い点群データの表示方法やハッシュタグ検索等のリクエストへの対応等、開発メンバーは難しい課題に対して試行錯誤を重ねつつ迅速に対応してくれたかと思います。また、システム開発だけでなくリリース後の維持サポート面でも多くのメンバーに支えてもらっています。携わってくれたメンバーに対し、とても感謝しております。
今後もユーザの生の声を聞き、より現場の〝困り事解決〟につながる機能開発を進めていきたいと思います。

デジタルツイン活用部
活用3G GM
水口 貴夫