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Innovation STORYS

#001

不審物検知システム

草木の揺れや影による
誤検知を解消物体認識に着目した監視技術

Tadashi Inuduka

犬塚 正先端技術開発本部 イノベーション推進部

野生動物との接触事故ゼロ、
テストコースの安全に寄与

これまで主に、開発者の仕事効率化を図る業務に長く携わってきました。少し変更を加えることで製品を使う側がより使いやすくなる仕組みを作ってきたんです。私はもともとコンピューターが好きで、不思議な魅力を持つプログラムに子どもの頃から惹かれ、大学で理工学を学び、入社したのがトヨタシステムズの前身であるトヨタシステムインターナショナルです。エンジニアとしてのキャリアにおいて忘れられないのは、2016年から開発に取組んだ「テストコースの安全・稼働率向上を狙った高精度監視技術の開発」。テストコースでの野生動物との接触事故をゼロにしたことが評価され、「2019トヨタサプライヤーコンベンション技術開発賞」を受賞できました。これは最新技術でトヨタの商品力向上に大きく寄与した企業に贈られるものです。これまでは車体に関する技術、素材開発などの分野で受賞される例が多かったのですが、IT分野としては初の受賞となりました。

私たちはお客様であるトヨタ自動車に技術、システムを提案するのが仕事です。2016年、私は「国内のテストコースを走る試作車が、ドローン(無人飛行機)を使った空撮に悩んでいるのではないか」と考えました。重要機密の試作車が、正式発表前に流出してしまえば大問題。しかもドローンが万一落下したら大事故につながりかねない。2015年春には首相官邸にドローンが落下する事故があり、社会問題化していた頃でもありました。そこで空中を飛ぶドローンを検知して反応する簡単な仮のシステムを作り、トヨタ自動車のテストコース関係者へと提案に伺いました。すると「実はドローン以上に困っているのが、テストコース内に侵入してくる野生動物なんだ」という言葉が返ってきたのです。

意外な言葉に驚きましたが、「そこにニーズがあったんだ!」と気持ちをすぐに切り替えました。テストコースに侵入してくる野生動物、特に鹿や猪に試作車がぶつかってしまえば試作車は大破。何よりドライバーが危険にさらされます。命に支障がなくても、しばらくの間は作業のためテストコースを塞ぎますから、他のクルマのテストにも影響するし、さまざまな予定が狂ってきます。

テスト走行は主に日中行われますが、走行時のライトのテストは当然、日が暮れてから行いますから、より野生動物との接触事故の危険度が高まります。テストコースの距離は数キロメートルにも及び、おおよそ野生動物がコース内に侵入してくるポイントには監視カメラが設置されています。といっても従来の監視カメラは「不審なものが映っていないか」を見極める動体検知が目的。いざテスト走行が始まると、複数台のモニターを常に人間が目視していました。もちろん監視カメラでも動く不審なものを検知できますが、動くものすべてを検知して反応してしまうことから、自然現象に起因する誤反応が多いという問題点がありました。

私たちが目指したのは、物体認識でした。動いているものを検知すると、カメラは動いているものにピントを合わせ続けます。レンズは固定されているのではなく、首を上下左右に動かしながら、時にはズームをして被写体を検知。動いているものの次の行動を予測しながらレンズは動くのですが、検知するたびに何度も自然の動きかそうでないかを判断します。従ってカメラは常に検知、判断、自然の動きであればキャンセルということを繰り返します。たとえばカメラがコース内を走るクルマを映したとします。すると、同時にカメラには風による葉の揺らぎ、路面に映る影も入り込むため、通常の動体検知では微妙な変化にも反応してしまっていました。検知したものが自然の動きなのか、そうでないのかを判断できるようにすることが、プロジェクト最大の難関でした。

自動車業界から生まれた技術は、
他分野でも応用できる

テストコースに近づく野生動物を、どのあたりで検知できるかも重要です。なるべく遠くのものまで検知できるに越したことはありません。テストコースから数百メートル離れた場所でも検知できるように、私たちは何度もテストを重ねました。野生動物が協力してくれることはありませんから、私を含めた仲間数人で、ときには鹿などの野生動物に扮して走ったこともあります。監視カメラから600メートル離れたところをジグザグに走ったり、ときには200メートル先の場所で緩急をつけて走ったり。今となれば息を切らしながら走ったことは良い思い出ですね。コンピュータの前ばかりでなく、こうしたトライもエンジニアには必要なんだなと実感しています。

動いているものの検知、認識、判断とキャンセルというシステムは、数式の理論がカギになっています。動いているクルマを検知したら、次に追いかける動きをあらかじめベクトル化しておい予測。それでも入り込んでくる不審な動きのものは何かを導き出すのです。私はこのプロジェクトに挑戦したとき、同じ開発者仲間で数式に秀でた者、システム開発に輝く才能を持った仲間らとチームを組みました。もちろん私もシステムを構築しましたが、自分のなかではサポート役に徹しました。周りを引き立てることで、何とかプロジェクトを形にして世に出したいと思ったんです。

「テストコースの安全・稼働率向上を狙った高精度監視技術の開発」は、各地のテストコースで徐々に運用されていますが、テストコース自体は世界中にそこまで数多くあるものではありません。そこで私は鉄道業界にも活用してもらい、踏切事故を減らすことに寄与できないかと考えています。踏切内に滞留しているものを検知する監視カメラが一般的かと思いますが、私たちの動体検知は視点を変え、より遠い位置にある不審な動きをするものを検知できます。鉄道業界のみならず、役立てていただける業界はまだまだあるのではと期待しています。私たちの開発は自動車業界から生まれたものですが、自動車業界から生まれたものは、さまざまな分野において先陣を切る、リーダー的な開発に違いないと自負しています。

私は現在、イノベーション推進部にいてトヨタ自動車にシステムや製品を提案することが業務の中心です。各地の展示会に実際に足を運んで、目で見て開発者と話をすることで、「少し変更を加えれば使えそうだ!」など、自動車メーカーと開発者をつなぐ橋渡しです。

一芸に秀でた有能な開発者が活躍できる、そんな役割にも面白さを感じながら働いています。

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