学生論文コンテスト

SDGs学生論文コンテスト 特別賞受賞論文(要旨)

2022

2022年3月開催「SDGs学生論文コンテスト」特別賞論文(要旨)をご紹介します。

自治体を原告とする気候変動訴訟の活用
―アメリカの裁判等からの示唆―

名古屋大学 大学院 伊神 裕人さん

近年、人為的な累積CO2排出量と地球温暖化の関係は明確になっているが、自治体や国民の多くは自らの問題とはせず、中央政府に委ねている。
闘って本当に調和した対策を生み出す必要があるので、気候変動対策の有力なアクターである自治体が気候変動訴訟を提起できるかを検討する。
アメリカの州や自治体は気候変動訴訟で中央政府の対応を求めたり、CO2排出企業に損害賠償等を請求したりしてきた。
日本の自治体が提訴した気候変動訴訟は皆無である。
日本の裁判所は自治体が提起できる訴訟の範囲を極めて限定し、財産権の主体となる訴訟だけを「法律上の争訟」としているので、この問題を取り上げたうえ、原告適格と事実的因果関係も分析した。
そして、温暖化懐疑論を意図的に拡散させた企業の責任追及訴訟や住民訴訟の活用も検討した。
自治体の訴訟提起では賛成住民と反対住民の対立が危惧されるし、事実的因果関係の問題は法的にクリアしにくいので、CO2排出企業の内部情報開示を求めていき、その過程で温暖化懐疑論を意図的に拡散させた企業が判明した場合にはCO2排出を差止めたり、損害賠償請求したりする訴訟を提起するものとした。

04.JPG